スキップとローファーの話(10巻までのネタバレ)

スキップとローファーをはじめて知ったのはアニメからで、アニメを見て面白いじゃんって漫画を買って読みはじめたんだけど、10巻でついに志摩くんへの感情が爆発してしまったので今このブログを書いています。10巻までの漫画の内容に触れるので、読んだことないけど興味あるからいつか読もうと思っている人はこの文章を読まないでね、今すぐ漫画を読みな!!!面白いから!!!

 

スキップとローファーをはじめて見たのはアニメからだったので、OPのメロウを聞いた時もぼんやりとこのみつみちゃんという田舎から都会の進高校へ通うために上京してきた女の子が、都会的なスマートさを持つかっこいい男の子へ向けた気持ちなんだろうと何となく思っていたわけなんですが、10巻まで読んだ今完全にこれは志摩くんの歌じゃんと気付いて悶えています。

 

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都会的な軽やかさを持っていると思っていた志摩くんは、確かに常にいろんな人に囲まれていて一見人付き合い上手に見えるけれど、実際はただ外見によって持て囃されていて志摩くん自身もそういう(みんなの思う理想の)自分でいることでしか価値がないと思っている男の子で。そんな志摩くんが迷子になって入学式に遅刻して転んで、でもすぐ起き上がって必死に走り出すみつみちゃんに興味を抱くわけなんだけれど。目標のために転びながらも前に向かって走る姿も、邪魔だと思ったら靴を脱ぎ捨てる自由さも、志摩くんにはなくて、そんなみつみちゃんが「眩しくて眩しくて僕は目を逸らしてしまう」なんだよ!!!今アニメ映像を見返してみたら、志摩くんはずっとみつみちゃんのこと見てるんだなって気付いて顔を覆ってしまった。歌詞を読んでいけばいくほど志摩くんだってなるので、本当に志摩くんの声優さんにメロウをカバーしてほしいです。待ってます。

 

志摩くんとみつみちゃんは志摩くんの「試しに付き合ってみる?」って言葉がきっかけでお試しで付き合ってみることになるんだけど、後から志摩くん本人が何で「付き合ってみる?」なんて言っちゃったんだろうって回顧するシーンがある。それは志摩くんが人の気持ちに聡くて、みつみちゃんの言って欲しそうなことを汲み取ってつい口にしちゃったんだろうなあと思った。実際氏家くんにバレーボールの練習一緒にしようと誘った時、氏家くんに嫌味な感じで拒否されるんだけどそれに対して「怒ったり取り乱したりって相手に親身になってないとできないじゃん オレは興味ないから怒りが湧かないんであって あれは氏家くんが言ってほしそうな言葉を言っただけ」ってみつみちゃんに説明する。そうやって志摩くんは今まで来る者拒まず去る者追わず、ただ一定以上は自分は踏み込まず人にも踏み込ませない人間関係を続けてきてた。だからそのあとみつみちゃんが「私は志摩くんのそういうとこ好きだ なー……」っていう言葉や表情からああ、みつみちゃんの好きってそういう「好き」だったんだって感情を拾い上げて、「じゃあ、試しに付き合ってみる?」って言っちゃう。目の前の女の子がそう望んでいそうだから。それに何よりみつみちゃんのことは人としてとても好きだから。

 

けれど、そのあと志摩くんは何となく落ち込んでいて、その理由が自分でもいまいちよくわからない。友達のクリスも話を聞いてくれるんだけど、最後は「テメーの感情のことをオレにきいてどうすんだ」「テメー自身がいちばんよくわかってるずだろ というかテメーにしかわからねーんだ よく考えろ」ってキレる。ちなみにこのシーンのクリスが何故かギターかき鳴らしてるの意味わからなくて好きです。でも実際、自分の気持ちは自分で考えるしかなくて志摩くんは人の気持ちには敏感なのに自分の気持ちには鈍感なんだなあと思った。自分のしたいことより自分に望まれていることを優先してきたから(そして志摩くんにはそれを叶えられるある程度の顔の良さも器量の良さもあったから)考えてきたことがほとんどなかったのかもしれない。

 

逆にみつみちゃんは「岩倉さんは他人の評価なんかどうでもいいって言い切れるくらい 愛されて生きてきたんだね」っていわれてしまう場面があるんだけど、確かにみつみちゃんの自己肯定感ってたとえば主席で学校に入学する頭の良さとかそういうものに依るものではなくて、(今ある勇気も自信も きっと 私がもともと持ってたものではない)って自分のその肯定感が人から愛されてきたことで培われてきたものだと思考するモノローグがある。そしてそれって志摩聡介にはおそらくないもので……志摩くんは母親が喜ぶから子役を演じていたというように、きっと天才子役としての息子を望まれていて志摩聡介として愛されたという経験がないんじゃないかと思う。だから、女子からは隣に置くとステータスを底上げするような「魅力的な男性」で男子からは「頼れるいい奴な同性」として、他人から望まれる自分でいることでしか人に愛される方法がわからない。そんな志摩くんが「志摩くんが来ないとつまんないから来てよって言いたかっただけなんだ……」っていわれるの相当嬉しかっただろうなと思った。

 

そして、志摩くんの好きと私の好きってきっと種類が違うよねってみつみちゃんから「私たち友達に戻れる?」って切り出すんだけど、そのあとのみつみちゃんの台詞がすごくすごく好きで。「私 恋じゃなくても 志摩くんが男の子でも女の子でも 小学生でもおじいちゃんでも この人好きだな~って思ったと思う だから友達になりたいの」って言葉は、本当に志摩くんが欲しかった言葉なんじゃないかなあと思った。しかも、みつみちゃんは志摩くんが言って欲しそうだから言ったわけじゃなくて、自分がそう思ってそう言いたいから伝えた。志摩くんが「ほんと?」って聞いてみつみちゃんが「うん ほんと!」って返すのはそういうことだと思う。

 

 

ちなみにはじめて読んだとき志摩くんが付き合って落ち込んだ理由がわたしもよくわからなかったんだけど、志摩くんの好きの基準が人として好きがいちばんすごい好きだと考えていて、恋人の好きは価値が低いと思っていることで判明して、そういうことかー!!!ってなった。志摩くんはきっとこれまでよく知らない女の子に付き合ってっていわれていいよって二つ返事で恋人になったりしてきたから、人としてよく知らなくたって好きじゃなくたってたとえば外見や周りの評価や他の魅力があれば恋人にはなれるけれど、人として好きなのはそういうもの抜きで、その人自身を知って尊敬できるとか一緒にいて楽しいとかそういう中身で好きになることだから尊いし重いって価値基準になっている。だから、みつみちゃんがそうしたいなら「恋人」もできるかなと思ったけど、そんなもんにしちゃうのはなんか嫌だったといっている。志摩くんにとって「女の子とこんな風に友達になるのは初めてかも」っていっていたように女の子の友達は恋人になることより貴重で得難いものだったから、何か価値が下がったように感じてしまったんだと思う。でも志摩くん、それは君みたいなモテるやつの特殊な価値観だよ……。

 

「たった1個の特別な感情をくれたつもりだと思うよ」といわれてみつみちゃんがくれたもののことを考えて、それがどういうことだったのかはじめて気付く志摩くんがそれから何だかみつみちゃんの前では不格好で不器用になってしまうのがとても好きです。好きな女の子の前では上手く格好つけられないイケメンいいぜ……。そして、それを思わずみつみちゃんに漏らすんだけど「ここにいる全員入学初日にゲロした人と友達でいてくれる人だよ?」っていわれて確かに……ってなる志摩くん面白かった。そう、別に完璧で理想の自分でいなくたって、ちょっとダサかったりゲロしたって嫌われたりしないんだ。

 

ミカちゃんが振られたことを告白して、ナオちゃんが(この世に自分を許してくれる人がいるのか不安でいっぱいだった)って膝抱えて泣いている過去の自分と重なって涙ぐみながら「大丈夫よおミカ あなたのそーゆーめんどくさいところ含めて愛する人が絶対 現れるから」って言い切ってくれるところがよかったな、将来なんて全然わからないけれどでもそうやって言い切って信じてくれる人がいるだけで心強くなれるものがある。

 

そして誠ちゃんがみつみちゃんのこと「BIG LOVEじゃん」っていったの本当そうじゃんって思った。まさしくBIG LOVEだよ。「『絶対手に入れたい!』みたいなのが『最高に好き』ってのは違うんかなーって」「みつみのそーゆー気持ちがガムシャラな恋愛感情に劣るとは思えないけどね 私は」ってみつみちゃんの気持ちをありのまま肯定してくれたのが本当に本当によかった。恋愛感情がいつだって最上級ではないし好きの感情が劣るわけではない、何なら本当は不可分な感情だっていいのかもしれない。手放したって別に好きでもいーんだってみつみちゃんが素直に納得できていたのがよかった。あ~~~、2人にはしあわせになってほしい。この気持ちもBIG LOVEだと思う。2人が一緒にいて笑ってくれたら嬉しい。11巻も楽しみです。